専門家からのアドバイス
【医師監修】記憶力・集中力・判断力を保ちたい! “認知機能”の低下を抑える予防策とは
人の顔や名前が思い出せない、昔より判断力が鈍った気がする、仕事中の集中力が続かない――。そんな体験が近ごろ増えてきた、という実感はありませんか? 年齢とともに体力が落ちるように、記憶力、判断や思考、理解といった脳の「認知機能」もまた、加齢に伴い低下します。しかし、その低下を遅らせたり認知機能をより活性化したりすることは、日常の心がけ次第で十分できます! 認知機能の低下を防ぎ、脳の若々しさを保つ秘訣について、医師の伊藤たえ先生にお聞きしました。
この記事の監修医師
伊藤たえ先生/医療法人社団 赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック 東京脳ドック 院長
脳神経外科、脳卒中専門医として、脳ドック、頭痛、認知症、頭部外傷、脳卒中などの診療に励む。患者様が安心でき、笑顔になれるよう丁寧な説明がモットー。
認知機能は加齢とともに低下する
――そもそも「認知機能」とは何でしょうか。
認知機能とは「理解、判断、論理などの知的機能」のことを指します。一般的には物忘れなど「認知機能=記憶力」のイメージが強いかもしれませんね。実際には記憶力だけでなく、知覚・判断・想像・推論・決定・言語理解など、社会生活を営む上で必要とされるさまざまな脳のはたらきを包括した知的能力が「認知」と呼ばれます。
――認知機能は加齢とともに衰えると聞きましたが、本当でしょうか?
そのとおりで、一般的には30歳を過ぎたころから脳の萎縮が始まり、脳細胞が徐々に減少していきます。65歳になると、脳のCTスキャン画像をみると明らかに委縮しているのが分かります。さらに、75歳にもなると30代のときの脳よりおよそ1割は軽くなるといわれています。
もう一つ、脳の認知機能のはたらきに影響を与えるのは、体内に酸素を送り込む最大酸素摂取量です。運動習慣の有無にもよるので個人差はありますが、一般的には人間の最大酸素摂取量は20歳がピークで、その後は下降線をたどっていきます。このように、加齢とともに脳に酸素を取り入れる能力が衰えることも、脳の認知機能を低下させる原因の一つです。
加齢とともに体力が低下するのと同様、認知機能の低下も否応なく進行します。とりわけビジネスパーソンの方にとっては、認知機能の低下によって次のような支障が生じます。
• 人の顔と名前が思い出せない
• 判断力が鈍る
• 論理的に考えることができなくなる
• マルチタスクに対応できなくなる
認知機能とは「理解、判断、論理などの知的機能」のことを指します。一般的には物忘れなど「認知機能=記憶力」のイメージが強いかもしれませんね。実際には記憶力だけでなく、知覚・判断・想像・推論・決定・言語理解など、社会生活を営む上で必要とされるさまざまな脳のはたらきを包括した知的能力が「認知」と呼ばれます。
――認知機能は加齢とともに衰えると聞きましたが、本当でしょうか?
そのとおりで、一般的には30歳を過ぎたころから脳の萎縮が始まり、脳細胞が徐々に減少していきます。65歳になると、脳のCTスキャン画像をみると明らかに委縮しているのが分かります。さらに、75歳にもなると30代のときの脳よりおよそ1割は軽くなるといわれています。
もう一つ、脳の認知機能のはたらきに影響を与えるのは、体内に酸素を送り込む最大酸素摂取量です。運動習慣の有無にもよるので個人差はありますが、一般的には人間の最大酸素摂取量は20歳がピークで、その後は下降線をたどっていきます。このように、加齢とともに脳に酸素を取り入れる能力が衰えることも、脳の認知機能を低下させる原因の一つです。
加齢とともに体力が低下するのと同様、認知機能の低下も否応なく進行します。とりわけビジネスパーソンの方にとっては、認知機能の低下によって次のような支障が生じます。
• 人の顔と名前が思い出せない
• 判断力が鈍る
• 論理的に考えることができなくなる
• マルチタスクに対応できなくなる
仕事や趣味は認知機能を維持する“エクササイズ”
――認知機能が加齢とともに低下するのは、誰にでも訪れることなんですね…。でも、何か打つ手はないのでしょうか?
脳の萎縮を止めること自体は、現代の医学では不可能です。それでも、認知機能を維持することや低下を遅らせることは十分可能です。
そのアプローチは大きく二つあります。一つは、脳のネットワークを増やすことです。脳が働くことによって、脳の神経細胞(ニューロン)からシナプスと言われる継ぎ目が枝分かれし、別の神経細胞とつながることで新しい回路が作られます。回路が増えるほど脳の情報伝達が速くなり、脳のはたらきは良くなるのです。
――脳の萎縮によって容量は小さくなっても、脳のネットワークを増やすことで活性化できるんですね。脳のネットワークを増やすにはどうすればよいのでしょうか?
日常生活の中で脳の認知機能をしっかり活用することですね。たとえば仕事は、高度な集中力、判断力、思考力を伴うので、脳のネットワークを増やすにはとても有効です。仕事の中でも単調なルーティンワークよりは、思考や情報の整理を伴う難易度の高い仕事、先の読めないことに取り組む仕事、新たなチャレンジを伴う仕事などが、脳の活性化にはよいでしょう。
また、興味のないことやつまらない仕事よりも、楽しいと思える仕事や意欲をかきたてられる仕事のほうが、集中力が高まり、脳が使えている状態も持続します。
仕事の他に、趣味でも脳のネットワークを増やすことができます。その際、長く続けている趣味ももちろんいいのですが、たとえば厨房に立ったことがない人が料理を始めてみるなど、新しい趣味や習い事にチャレンジすることで脳がより活性化されます。また、編み物など手先を使う趣味も効果があるといわれています。
脳の萎縮を止めること自体は、現代の医学では不可能です。それでも、認知機能を維持することや低下を遅らせることは十分可能です。
そのアプローチは大きく二つあります。一つは、脳のネットワークを増やすことです。脳が働くことによって、脳の神経細胞(ニューロン)からシナプスと言われる継ぎ目が枝分かれし、別の神経細胞とつながることで新しい回路が作られます。回路が増えるほど脳の情報伝達が速くなり、脳のはたらきは良くなるのです。
――脳の萎縮によって容量は小さくなっても、脳のネットワークを増やすことで活性化できるんですね。脳のネットワークを増やすにはどうすればよいのでしょうか?
日常生活の中で脳の認知機能をしっかり活用することですね。たとえば仕事は、高度な集中力、判断力、思考力を伴うので、脳のネットワークを増やすにはとても有効です。仕事の中でも単調なルーティンワークよりは、思考や情報の整理を伴う難易度の高い仕事、先の読めないことに取り組む仕事、新たなチャレンジを伴う仕事などが、脳の活性化にはよいでしょう。
また、興味のないことやつまらない仕事よりも、楽しいと思える仕事や意欲をかきたてられる仕事のほうが、集中力が高まり、脳が使えている状態も持続します。
仕事の他に、趣味でも脳のネットワークを増やすことができます。その際、長く続けている趣味ももちろんいいのですが、たとえば厨房に立ったことがない人が料理を始めてみるなど、新しい趣味や習い事にチャレンジすることで脳がより活性化されます。また、編み物など手先を使う趣味も効果があるといわれています。
食事・運動・睡眠も認知機能の維持に影響
――仕事や趣味は、脳のネットワークを増やすために最適な“エクササイズ”なんですね。
もう一つのアプローチは、脳の萎縮の進行をなるべく遅らせることです。脳の萎縮に大きな影響を与えるのは、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病です。特に糖尿病は脳の動脈硬化を引き起こしやすく、最悪の場合は脳梗塞など脳血管疾患にもつながります。
生活習慣病の予防には、食事・運動・睡眠を改善するのが基本中の基本です。まず食事ですが、塩分はなるべく控え、過度な糖質摂取にも注意しましょう。
お酒・タバコも脳の萎縮の進行を速めるリスクがあります。アルコールの多量摂取と脳の萎縮には正の相関がみられるとの調査結果があり、飲み過ぎには注意が必要です。また、タバコのニコチンには血管を収縮させる作用があるので、吸わないことが望ましいでしょう。
運動も、脳のはたらきに大きな効果をもたらします。特に有酸素運動は、最大酸素摂取量を維持し、多くの酸素を脳に取り込むことができるだけでなく、脳の萎縮の進行を防ぐ可能性があると報告されています。激しい運動でなくとも、一日30分程度を目安に軽いジョギングやウォーキングなどをするだけでも高い効果があります。
もう一つのアプローチは、脳の萎縮の進行をなるべく遅らせることです。脳の萎縮に大きな影響を与えるのは、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病です。特に糖尿病は脳の動脈硬化を引き起こしやすく、最悪の場合は脳梗塞など脳血管疾患にもつながります。
生活習慣病の予防には、食事・運動・睡眠を改善するのが基本中の基本です。まず食事ですが、塩分はなるべく控え、過度な糖質摂取にも注意しましょう。
お酒・タバコも脳の萎縮の進行を速めるリスクがあります。アルコールの多量摂取と脳の萎縮には正の相関がみられるとの調査結果があり、飲み過ぎには注意が必要です。また、タバコのニコチンには血管を収縮させる作用があるので、吸わないことが望ましいでしょう。
運動も、脳のはたらきに大きな効果をもたらします。特に有酸素運動は、最大酸素摂取量を維持し、多くの酸素を脳に取り込むことができるだけでなく、脳の萎縮の進行を防ぐ可能性があると報告されています。激しい運動でなくとも、一日30分程度を目安に軽いジョギングやウォーキングなどをするだけでも高い効果があります。
あなたの脳は何歳?認知機能チェックにチャレンジ
伊藤先生に教えていただいた認知機能チェックの一つに「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」があります。参考としてご紹介しますので、ご家族や身内の方と一緒に行ってみてください。30点満点で、20点以下の場合は注意が必要です。
ご家庭で行う場合、環境によっては集中できなかったり、聞き間違いが起きたりします。最終的な判断は、脳神経外科やもの忘れ外来などがある病院で、専門医に実施してもらいましょう。