専門家からのアドバイス
【医師監修】最近、物忘れがひどいのはなぜ? 認知症との違いや今日からできる対策も紹介
最近、職場や家庭で物忘れがひどくなったと感じることはないでしょうか。物忘れの原因は、大きく分けて加齢と認知症の2つに分けられます。本記事では、加齢と認知症による物忘れの違いや、記憶力を高める方法などを紹介。併せて、物忘れ予防のために積極的に摂りたい食材なども紹介します。
- この記事の監修医師
- 物忘れがひどい主な理由は"加齢"と"認知症"
- 【加齢の場合】忘れた認識がある
- 【認知症の場合】忘れた認識がなく日常生活に支障が出る
- 【その他】脳への負荷が大きいと一時的に物忘れがひどくなる場合も
- 物忘れがひどいとき、すぐにできる4つの対策
- 1. 行動を声に出す
- 2. 指さし確認をする
- 3. "手書き"でメモをする
- 4. イメージトレーニングする
- 物忘れがひどい! 記憶力を高めるために重要な4つの生活習慣
- 1. 質の良い睡眠と、十分な睡眠時間を確保する
- 2. ウォーキングなどの軽い有酸素運動をする
- 3. 人との交流を大切にする
- 4. 栄養バランスを考慮した食事をする
- 物忘れがひどいと感じたら、今できることから実践を
この記事の監修医師
今野裕之先生/精神科、心療内科医、認知症診療医、ブレインケアクリニック名誉院長 ・一般社団法人日本ブレインケア・認知症予防研究所所長
順天堂大学大学院卒業。老化予防・認知症予防に関する研究で博士号を取得。大学病院や精神科病院での診療を経て2016年にブレインケアクリニック開院。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療に当たる。
認知症予防医療の普及・啓発活動のため2018年に日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立。
著書・監修に「最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術(青春出版社)」など。
物忘れがひどい主な理由は"加齢"と"認知症"
物忘れがひどいと感じる場合、大きく分けると加齢と認知症の2つの原因が考えられます。しかし、加齢による物忘れと、認知症による物忘れでは性質が若干異なります。また、物忘れから認知症に進行することもあるので「たかが物忘れ」と思い過ごすのではなく、予防することが大切です。
【加齢の場合】忘れた認識がある
加齢による物忘れは、体験の一部を忘れる程度のものです。例えば食事のメニューを忘れたり、出かけた先で何を買うのか忘れたり、など。物忘れの場合、忘れたことを自覚しているのが特徴で、生活に大きな支障は出ません。
そのため、何かを忘れたと認識しているのであれば、加齢が原因である可能性が高いと考えられます。しかし、認知症へと進行する場合もあるので、生活習慣を見直し、記憶力を高める工夫をするなど、対策を講じると良いでしょう。
そのため、何かを忘れたと認識しているのであれば、加齢が原因である可能性が高いと考えられます。しかし、認知症へと進行する場合もあるので、生活習慣を見直し、記憶力を高める工夫をするなど、対策を講じると良いでしょう。
【認知症の場合】忘れた認識がなく日常生活に支障が出る
認知症による物忘れの特徴は、体験したこと自体を忘れてしまうことです。例えば食事したことを忘れ、また食べようとします。加齢による物忘れに比べ、認知症では忘れたことを自覚していないため、周囲が伝えても思い出せなかったり、失くしたものを盗まれたと思ったりするなど、生活に支障が出てきます。
認知症といってもいくつかの種類があり、治せる認知症もあるため、まずは医療機関できちんとした診断をしてもらうことが重要です。適切な治療を行うことで、症状を改善したり、症状の進行を遅らせることができる可能性があるので、思い当たる症状がある時はまず病院を受診しましょう。
認知症といってもいくつかの種類があり、治せる認知症もあるため、まずは医療機関できちんとした診断をしてもらうことが重要です。適切な治療を行うことで、症状を改善したり、症状の進行を遅らせることができる可能性があるので、思い当たる症状がある時はまず病院を受診しましょう。
【その他】脳への負荷が大きいと一時的に物忘れがひどくなる場合も
不安やストレスなどが原因で脳に負荷がかかっている状態のときも、物忘れをしやすくなります。また、近年ではスマートフォンを長時間使用することで、脳が情報過多の状態になってしまうことも。脳の整理が追い付かずに「オーバーヒートのような状態」になってしまうケースがあります。
脳に過剰な負荷がかかってしまうと、一時的な物忘れやうっかりミスなどが起きやすくなります。脳への負荷を軽減するために、やるべきことに優先順位をつけて不要不急のものは後回しにする、スマートフォンやパソコンに触らない時間をつくる「デジタルデトックス」を行ってみる、といった対策を行いましょう。
脳に過剰な負荷がかかってしまうと、一時的な物忘れやうっかりミスなどが起きやすくなります。脳への負荷を軽減するために、やるべきことに優先順位をつけて不要不急のものは後回しにする、スマートフォンやパソコンに触らない時間をつくる「デジタルデトックス」を行ってみる、といった対策を行いましょう。
物忘れがひどいとき、すぐにできる4つの対策
物忘れに悩んでいるなら、対策をすることで改善できる場合があります。ここでは記憶をしっかり定着させて物事を覚えやすくする、4つのおすすめ方法を紹介します。職場や家など場所を選ばず、すぐに実践できる方法ばかりです。
1. 行動を声に出す
覚えたいことを声に出すと、行動を意識化して頭に残すことができます。これは、自分が覚えやすい形式に情報が置き換わるため記憶に残る、「生産効果」とも呼ばれる現象です。
例えば「車のカギは玄関の棚にしまった」などと実際に声に出すことで、カギの置き場所を覚えられます。人の名前を覚える際も、何度も会話の中で繰り返し呼ぶようにすると、忘れにくくなるはずです。
例えば「車のカギは玄関の棚にしまった」などと実際に声に出すことで、カギの置き場所を覚えられます。人の名前を覚える際も、何度も会話の中で繰り返し呼ぶようにすると、忘れにくくなるはずです。
2. 指さし確認をする
声を出すことに加えて、指をさしながら行動や物事を確認すると、より記憶に残ります。声や手、腕を動かすことにより脳が活性化され、記憶すべき物事に注意を集中し、的確に情報を処理できるためです。
例を挙げると電車やバスの運転手は、安全のため指をさし声に出して確認をしますよね。もしも声に出すのが恥ずかしい状況なら、指さしだけを行う、または心の中で指さしをイメージするだけでも、記憶に残りやすくなるでしょう。
例を挙げると電車やバスの運転手は、安全のため指をさし声に出して確認をしますよね。もしも声に出すのが恥ずかしい状況なら、指さしだけを行う、または心の中で指さしをイメージするだけでも、記憶に残りやすくなるでしょう。
3. "手書き"でメモをする
スマートフォンやパソコンにメモをするより、手書きでメモをする方が記憶に定着します。手書きでメモをする行為は、要点をまとめるなど考えることも同時に行います。そのときに使われる、脳の前頭葉(ぜんとうよう)が刺激されるためです。
また、思い出しながらメモすることで、記憶を司る脳の海馬(かいば)も刺激されます。書いている内容をしっかり理解しながら書くと、より脳が活性化して記憶に残りやすくなります。
また、思い出しながらメモすることで、記憶を司る脳の海馬(かいば)も刺激されます。書いている内容をしっかり理解しながら書くと、より脳が活性化して記憶に残りやすくなります。
4. イメージトレーニングする
脳は文字や単語で覚えるよりも、映像や風景などイメージで覚える方が楽にできます。例えば「東京」という単語で東京タワーなどを連想するように、イメージすることで記憶はより強く残るのです。
そのため、日頃からイメージしながら覚える練習をすると良いでしょう。物を置いた場所も、その場所をイメージしておくことで思い出しやすくなります。
そのため、日頃からイメージしながら覚える練習をすると良いでしょう。物を置いた場所も、その場所をイメージしておくことで思い出しやすくなります。
物忘れがひどい! 記憶力を高めるために重要な4つの生活習慣
物忘れがひどくならないようにするには、脳に良い刺激を与えたり、しっかりと睡眠をとったりすることが重要です。ここでは記憶力が低下しないように、心がけたい生活習慣を紹介します。
1. 質の良い睡眠と、十分な睡眠時間を確保する
人の記憶は、寝ている間に脳へ定着します。そのためしっかり眠れている人は、高い記憶力をキープできるのです。一方で、睡眠不足は記憶力を低下させることが分かっています。それに加え、慢性的な睡眠不足は認知症になるリスクを高めるので注意が必要です。
物忘れ防止や健康のため、十分な睡眠時間の確保とともに、質の良い睡眠を意識することをおすすめします。例えば、寝る2時間前からテレビやスマートフォンなどを見ずに目を休める、寝る1時間前までに入浴して就寝までリラックスして過ごす、などの習慣は、寝つきの良さにつながります。
物忘れ防止や健康のため、十分な睡眠時間の確保とともに、質の良い睡眠を意識することをおすすめします。例えば、寝る2時間前からテレビやスマートフォンなどを見ずに目を休める、寝る1時間前までに入浴して就寝までリラックスして過ごす、などの習慣は、寝つきの良さにつながります。
2. ウォーキングなどの軽い有酸素運動をする
記憶に関係している前頭葉や海馬は、血流量が多い部分です。脳への血流が悪くなると、脳の老化につながります。そのため、運動をして体中の血流を良くし、脳への血流を上げることが効果的です。物忘れには、ウォーキングやヨガ、太極拳や水泳などの有酸素運動が良いとされています。
また、日光を浴びるとビタミンDが生成され、認知症の予防にもつながりますので、天気が良い日は外で行う運動を積極的に行いたいところです。週3回以上、20~30分程度を目安に運動すると良いでしょう。
また、日光を浴びるとビタミンDが生成され、認知症の予防にもつながりますので、天気が良い日は外で行う運動を積極的に行いたいところです。週3回以上、20~30分程度を目安に運動すると良いでしょう。
3. 人との交流を大切にする
脳の機能を低下させないためは、脳を使うことも重要です。人と積極的にコミュニケーションを取ることで脳に良い刺激を与え、活性化させることができます。
例えば、家族との会話を大切にしたり、ボランティア活動に参加したりするのはいかがでしょうか。コミュニティの中で自分の役割を作っておくと、物忘れ防止だけでなく生きがいや活力にもつながります。
例えば、家族との会話を大切にしたり、ボランティア活動に参加したりするのはいかがでしょうか。コミュニティの中で自分の役割を作っておくと、物忘れ防止だけでなく生きがいや活力にもつながります。
4. 栄養バランスを考慮した食事をする
ごはんやパンなどの「主食」、肉や魚、卵などの「主菜」、野菜やきのこ、海藻などの「副菜」をバランスの良く食べることは、身体にも脳にも重要なことです。また、糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、認知症のリスクを上げると言われているため、生活習慣と食生活の両方を見直したいですね。甘いものや炭水化物、塩分のとりすぎを避け、食事の量は腹八分目を心がけましょう。
物忘れがひどいと感じたら、今できることから実践を
物忘れがひどいと感じると、不安になることもあるかもしれません。物忘れには大きく加齢と認知症の2つの要因が考えられますが、認知症が疑われる場合はまず病院を受診することをおすすめします。物忘れをしないために、記憶力を高める工夫や生活習慣の改善など、自分でできる方法がたくさんあります。簡単にできることから実践して、生き生きとした毎日を送りましょう。