酸化や糖化、炎症はなぜ悪い?イミダが持つ抗酸化・抗糖化作用とそのメリット

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イミダゾールジペプチド(イミダ)には体内の酸化、糖化、炎症を抑える作用があります。一般的に酸化は「サビつき」、糖化は「コゲつき」と表現され、炎症をもたらして数多くの病気の大きな要因となると考えられています。ここでは、酸化と糖化について詳しく説明するとともに、イミダが酸化・糖化を抑えるメカニズムもご紹介します。

この記事の監修医師
伊藤たえ先生/医療法人社団 赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック 東京脳ドック 院長

伊藤たえ先生/医療法人社団 赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック 東京脳ドック 院長

脳神経外科、脳卒中専門医として、脳ドック、頭痛、認知症、頭部外傷、脳卒中などの診療に励む。患者様が安心でき、笑顔になれるよう丁寧な説明がモットー。

酸化・糖化・炎症は相互に影響し合って病気や老化につながる

炎症は、体内に異物(細菌やウイルスなど)や不要物があるときに、身体を防御するために起こります。炎症は身体にとって必要なものですが、必要以上に起こり過ぎると健康を損なう原因となります。

慢性的な炎症は多くの病気をもたらすきっかけとなり、老化にも大きく関わっています。例えば、脳の神経に炎症が起こることで認知機能が低下することが知られています。詳しくは「なぜイミダは記憶力の維持に良いの?【研究者に聞く】」の記事をご参照ください。
体内で酸化や糖化が進むと、炎症が起こります。なぜなら、組織の一部が酸化や糖化により劣化した不要物(ゴミ)となり、それらを片付けるために炎症が引き起こされるからです。
酸化・糖化・炎症の関係性(イメージ図)
図1に示すように、酸化・糖化と炎症は相互に関連しており、その背景にある生活習慣や身体的・精神的ストレスから影響を受けています。

酸化や糖化をなるべく抑えて炎症を起こさないようにすることは、健康やアンチエイジングにとって有益なのです。

酸化ストレスとは?

錆びた釘の画像
まずは身体の「サビつき」、すなわち酸化について紐解いてみましょう。

私たちは、大気に含まれる酸素を吸わないと生きていけません。実際に成人(安静時)は1日あたり約430リットルもの酸素を消費しています。こんなにも多くの酸素を取り入れる理由は、酸素を使って栄養素(糖質、脂質、たんぱく質)を燃やしてエネルギーを作り出さないと、生命活動ができないからです。

酸素は、効率的なエネルギー産生を可能にしてくれますが、その過程で「活性酸素」という副産物も発生してしまいます。哺乳類では、取り込んだ酸素の数%が活性酸素になると言われています。この活性酸素が酸化をもたらす大きな原因となります。

※本記事では、酸化は何らかの分子に酸素原子が結合することを指します。

活性酸素とは?

活性酸素は普通の酸素よりもずっと、他の分子に結合する(=酸化する)能力が高いものです。相手を選ばず、体内の物質にすぐにくっついて酸化させてしまいます。

全身の細胞がエネルギーを得るために酸素を使っていますから、活性酸素は体中のそこかしこで発生しています。このままだと全身の組織が酸化してしまうので、私たちの身体には活性酸素の働きを食い止めるシステム(抗酸化防御機構)が備わっています。

この抗酸化防御機構のおかげで、普段は活性酸素のできる量と消去される量はバランスが取れています。しかし、活性酸素が過剰になり、抗酸化防御機構による消去がそれに追いつかなくなってバランスが崩れると「酸化ストレス」という状態になります。

なお、活性酸素は私たちにとって悪いものではなく、一部では良いものとして活用されています。活性酸素の悪い点・良い点は次の通りです。
活性酸素の悪い点
  • 遺伝子(DNA)やたんぱく質、細胞膜などを酸化させ、細胞にダメージを与えて、機能障害を引き起こす
  • 酸化による細胞の損傷・死滅により、老化の促進やがん化を招くことがある
  • コレステロールを酸化して血管の老化(動脈硬化)を促進する
  • 糖尿病では、酸化された糖とたんぱく質が結合し、異常な糖化たんぱく質が増加
  • 高齢者に多い脳の病気(アルツハイマー病やパーキンソン病など)では、酸化したたんぱく質が脳に蓄積している
活性酸素の良い点
  • 細菌などの異物の除去に役立つ
  • 好中球などの免疫細胞がつくる活性酸素は、細菌などを殺すための武器として使われている
  • 血管の内腔を広げて、血液が身体のすみずみまで流れるようにする作用がある
  • 細胞間の情報伝達、排卵、受精、細胞の分化(成熟して機能を発揮できる状態になること)などを調節する

酸化ストレスが起きる要因

体内に発生した活性酸素を消去してくれる抗酸化防御機構は、体内で作られた抗酸化酵素(スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなど)に加え、食事として体外から取り入れた抗酸化物質(ビタミンC、ビタミンE、カロテノイド類、カテキン類など)によって働いています。

しかし、以下のような不健康な生活習慣になると、抗酸化防御機構の働きが悪くなり、バランスが崩れて酸化ストレス状態になりやすくなります。
  • 心理的・肉体的ストレス、病気
  • タバコ(喫煙)
  • 紫外線、放射線
  • 大気汚染
  • 酸化した食べ物の摂取、偏った食事
  • 運動不足、過度な運動
酸化ストレス状態になると、体内に酸化された不要物がたまり、慢性的な炎症を引き起こしてしまいます。これが老化や病気につながっていくと考えられています。

イミダが抗酸化作用を発揮するメカニズム

イミダゾールジペプチド(イミダ)は、ヒトを含む動物の筋肉や脳に多く存在する成分です。イミダ(カルノシン、アンセリンなど)は「イミダゾール基」という構造を持ち(図2)、このイミダゾール基は活性酸素を捕まえて消去するという能力があります。つまり、イミダは活性酸素を消去する抗酸化物質の一つなのです。
アンセリン・カルノシンの構造式図説

糖化ストレスとは?

トースターでパンが焼かれている様子の画像
ここからは身体の「コゲつき」、すなわち糖化について説明します。なぜ糖化が「コゲつき」と表現されるのかというと、私たちが料理をしていて焦がすのと同じ反応(メイラード反応)だからです。糖分とたんぱく質(アミノ酸)を一緒に加熱すると、カラメルのように茶色く変色します。これと同じことが体内でも起きているのです。

糖化が起こると炎症につながる

体内でたんぱく質が糖化を起こすと、そのたんぱく質の形が変わってしまい、機能しなくなります。機械で例えると、部品の形が変わり動かなくなる状態といえるでしょう。

糖化して使えなくなったたんぱく質は、AGEs(蛋白糖化最終生成物)と呼ばれます。このAGEsは体内の組織にこびりつきますので、それを掃除するために炎症が起こります。

すなわち、糖化は慢性的な炎症の引き金となり、病気や老化の要因となってしまうのです。このようなAGEsができる危険性が高い状態を「糖化ストレス」と呼びます。

糖化ストレスが起きる要因

食後血糖値の上昇を示すイメージ画像
体内で糖化が起きるのはなぜでしょうか。一番の大きな要因は高血糖です。なかでも、食後の血糖値がとても高くなってしまう(最高血糖値140mg/dL 以上)人では、糖化が起こる可能性が高まります。糖分をたくさん含む血液が全身に流れていると、全身の組織たんぱく質が糖化しやすくなるわけです。

また、血液検査で脂質の値(中性脂肪、LDL コレステロール)が高いと診断を受けた人も、糖化しやすい状態に置かれています。

つまり、糖尿病や脂質異常症、メタボリックシンドロームの人は、体内が糖化しやすくなっているのです。そこから慢性炎症が起こり、さらに病気を悪化させる可能性があります。

糖化は、糖尿病合併症、白内障、加齢黄斑変性、皮膚老化、骨粗鬆症、変形性関節症、アルツハイマー病、卵巣機能の低下、毛髪の老化、動脈硬化といった病気につながっていくこともあります。

イミダが抗糖化作用を発揮するメカニズム

イミダには糖化を防ぎ、AGEs産生を抑制する作用があります。そのメカニズムはいくつか考えられており、その一つはたんぱく質が糖と結びついて構造が変わってしまう前に元の形に戻してくれる働きをすることです。

また、糖が酸化するとたんぱく質を糖化しやすくなるのですが、イミダの抗酸化作用により、それを防ぐことができます。

糖化ストレスと酸化ストレスはつながっている

ここまで、酸化ストレスと糖化ストレスの説明をしてきましたが、この2つは実はつながっています。

血糖値が高い状態では、糖化が起こりやすいことに加え、活性酸素が増加してしまい、酸化ストレスが高まることが知られています。しかも、活性酸素の良い作用(血管を広げて、しなやかにする=動脈硬化を抑制)も邪魔されてしまいます。

つまり、血糖値が高い状態は酸化も糖化も起こりやすくなっていて、健康がかなり心配な状態なのです。もし、健康診断で血糖値が引っかかっていたり、高血糖によって食後に耐えがたい眠気に襲われていたりするようなら、病院を受診しましょう。

なお糖尿病の検査項目であるヘモグロビンA1c(HbA1c)は、酸素を運ぶ役割を持つ赤血球に含まれるヘモグロビンたんぱくがどれだけ糖化されているかを示す値です。血糖値が高い状態が続くとヘモグロビンが糖化されるので、ここ1~3か月の血糖値がどれだけ高かったかを示す指標として使われています。

酸化・糖化ストレスへの対処法

サラダチキンのイメージ画像
では、酸化ストレスや糖化ストレスを防ぐためにはどうすればいいでしょうか。

血糖値を正常に保って糖化しにくくすることと、高齢になると減ってくる「抗酸化力」を高めることが重要です。具体的には、日ごろからバランスの取れた食事を摂り、適度な運動をし、十分な睡眠を取ることで、抗酸化防御機構を良好に保つことができます。

なお、過度な運動は酸化ストレスを高めてしまいますが、これはよっぽど激しい運動をしたときのケースです。中程度の運動ならかえって抗酸化酵素の働きを高めたり、炎症を防いだりする方法に働きますので、安心してください。

このように、規則正しい生活をして体内で作られる抗酸化物質を増やすとともに、ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化能をもつ栄養素を含む食事を摂ることが勧められます。特にイミダは抗酸化・抗糖化の機能を持っています。

酸化や糖化が気になる人は、イミダを豊富に含む鶏むね肉を摂ったり、サプリメントの形で活用してみたりしてはいかがでしょうか。イミダレシピはこちらで紹介しています。
酸化・糖化ストレスを減らすことで、慢性炎症が起こりにくくなり、若々しく・元気に生活を送ることができるはずです。
<参考文献>
・健康長寿ネット「酸化ストレス」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/sanka-sutoresu.html
・e-ヘルスネット「活性酸素と酸化ストレス」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-003.html
・江口裕信ら.酸化ストレスと健康.生物試料分析 2009: 32(4);247-256
・米井嘉一.糖化ストレスと炎症・疼痛.Comprehensive Medicine 2020:19(1);11-20
・西谷真人ら.新規抗疲労成分:イミダゾールジペプチド.日本補完代替医療学会誌 2009;6(3):123–129
・大阪市立大学大学院 医学研究科 疲労医学講座.イミダペプチド成分について
https://www.med.osaka-cu.ac.jp/fatigue/topics/imidapepuchido.html
・Boldyrev AA et al. Physiology and pathophysiology of carnosine. Physiol Rev 2013 Oct;93(4):1803-45