なぜイミダは高齢者の筋力アップに良いの?【研究者に聞く】

#イミダゾールジペプチド #ロコモティブシンドローム #高齢者

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高齢になると自然に筋力が落ちてきますが、これは要介護や寝たきりにつながる要因の一つであり、積極的なたんぱく質の摂取や運動によって筋力を維持・向上させることが必要です。そのとき、イミダゾールジペプチド(カルノシン・アンセリンなどの総称;以下イミダ)が助けになるかもしれません。イミダと高齢者の筋力アップについて、日本ハム株式会社中央研究所の研究員に詳しくお話を聞きました。

高齢になると自然に筋力が落ちてきますが、これは要介護や寝たきりにつながる要因の一つであり、積極的なたんぱく質の摂取や運動によって筋力を維持・向上させることが必要です。そのとき、イミダゾールジペプチド(カルノシン・アンセリンなどの総称;以下イミダ)が助けになるかもしれません。イミダと高齢者の筋力アップについて、日本ハム株式会社中央研究所の研究員に詳しくお話を聞きました。
佐藤研究員

佐藤研究員

1991年 日本ハム㈱入社 中央研究所に配属
2006年 博士(学術) イミダに関する研究で学位を取得
現在に至る

はじめに:高齢者が自宅で自立して暮らすために

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(編集部より)
高齢者では、いかに筋力を維持・向上させるかが、暮らしの中で重要になってきます。加齢により自然に筋力や平衡感覚が低下してくるので、気づいたら何もないところでつまづいたり、思うように足が上がらなくて転んだりするようになります。

高齢者の転倒が怖いのは、骨が弱くなっているために、容易に骨折をしてしまうからです。骨折による入院は、介護状態や寝たきりになる大きなきっかけになり得ます。

いつまでも自宅で自立して暮らすためには、ロコモティブシンドローム(加齢に伴う運動器機能の衰え)にならないように、筋力を維持・向上するための食事や運動を行いましょう。

ただし、急激に激しい運動を始めるとかえって怪我をしやすく、継続しにくいので、日常のなかで無理なくできる運動(片脚立ち、スクワット、かかと上げなど)から始めてみてください。

運動を始めると、疲れがたまってやる気が削がれてしまうことがあるかもしれません。たんぱく質などの栄養バランスに配慮したうえで、高齢者の筋疲労の軽減や筋力向上に役立つ成分であるイミダを摂り入れるのはどうなのか、研究者にお話を聞きました。
また本記事は、医師の古賀昭義先生に監修いただきました。
監修医師が特定商品への保証や購入等を推薦するものではありません。

加齢により筋肉中のイミダが減る

編集部:
――高齢者の筋疲労・筋力低下とイミダはどのように関係していますか?

研究員:
イミダにはいくつか種類があり、人の筋肉に含まれているイミダは「カルノシン」という成分です。

実は、加齢によって筋肉量が減っていくとともに、筋肉内のイミダ濃度も低下することがわかっています。筋肉内のイミダ濃度が低いと、筋疲労を起こしやすくなります。逆に、筋肉内にイミダが多い人は運動パフォーマンスが高いです。詳しくは「なぜイミダはスポーツにいいの?【研究者に聞く】」の記事をご覧ください。

筋疲労が起こりやすくなると、身体活動量が減るので、そこから筋力の低下につながっていく可能性があります。疲れたから動かない、動かないから体が弱って、体が弱いからすぐに疲れる……という悪循環に陥らないようにすることが大切だと考えています(図1)。
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高齢者がイミダを摂取するとどうなる?

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編集部:
――高齢者でイミダが減っているということは、補充をすればいいのでしょうか?その場合、どのようなことが起こりますか?

研究員:
高齢者の方にはぜひ鶏肉などの食品もしくはサプリメントから、イミダを補充していただきたいと思います。先ほども申し上げた通り、加齢によって筋肉内のイミダ濃度は低下します。高齢者は若い人よりもイミダ濃度が低いので、イミダを補充した際に体内で増えやすい傾向があると想定されています。

実際に、高齢者にイミダを1か月間摂取していただき、筋力やバランス能力、体感の変化を確認したことがあります。その結果、目を開けて片足立ちができる時間が平均で30秒伸びてバランス能力が改善し(図2)、膝を伸ばす筋力が増大していました(図3)。
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さらに、全身の疲労感が軽減されていたことも分かりました(図4)。
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ロコモティブシンドロームかどうかを調べられる「ロコチェック」には、「片脚立ちで靴下がはけるか」という、バランス能力を確認するものがあります。高齢者の方はぜひ一度ロコチェックをしてみてください。

いま、高齢者においてサルコペニア(加齢による筋肉量の減少および筋力の低下)やフレイル(加齢により心身が老い衰え、健常な状態と要介護状態の中間の状態)をいかに予防するかということが社会の課題となっています。

高齢者の筋力が向上することでサルコペニアやフレイルを予防できれば、住み慣れた自宅で自立して暮らせる時間が長くなると期待されます。それは社会的にも良いインパクトを与えると思います。

高齢者はイミダをどう取り入れたらいい?

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編集部:
――高齢者がイミダを取り入れるにはどうすればいいか、アドバイスをいただけますか。

研究員:
イミダが豊富に含まれる鶏肉(特に鶏むね肉)を積極的に食べてください。鶏肉は高たんぱく・低脂肪で、高齢者におすすめしたい食材です。

ただし鶏むね肉は、調理によってはパサつきや硬さが気になって、毎日十分な量を摂るのは難しい方もいらっしゃるかもしれません。イミダは魚肉(カツオ、マグロ、サケ)、豚肉などにも含まれていますので、さまざまなたんぱく源を組み合わせて食べるようにしてください。

もし、食事からのイミダ摂取が足りないようなら、サプリメントという形で補うことも一つの方法だと思います。イミダを摂り過ぎて問題になることは基本的にはありませんので、食事とサプリを組み合わせて摂ることもご検討ください。

さらに若々しく生きがいを持って過ごせる社会へ

編集部:
――今後、筋疲労・筋力に関してイミダ研究はどのように進んでいくでしょうか?

研究員:
イミダは、もともとヒトの筋肉と脳に多く含まれています。筋肉と脳は特に活発に働く組織ですので、それを守る働きをもつと考えられています。

体内で重要な働きをする成分ほど、加齢に伴って減少してしまうというのが残念ですが、イミダは経口摂取によって補うことができます。ですので、鶏肉でもサプリメントからでも積極的に摂取してほしいと思います。

筋と脳の働きを維持すると、積極的に社会参加ができ、さらに若々しく生きがいを持って過ごせるのではないかと思います。そういう社会に少しでも近づける研究を続けたいと思います。

Profile

【監修】古賀昭義 先生

【監修】古賀昭義 先生

所属 医療法人社団永生会 整形外科/医学博士・日本整形外科学会認定専門医・日本抗加齢医学会認定専門医/日本大学医学部卒業後、同大学整形外科入局。同大学医局長→兼任講師→臨床准教授→医療法人社団トーイシン会市谷八幡クリニック院長を経て現職。