60代から気になる「老年症候群」とは ~加齢による体力低下はどんな病気をもたらす?~

#イミダゾールジペプチド #体力をつける #老年症候群

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日本人の死因1位はがん、2位は心疾患、3位は老衰、4位は脳血管疾患、5位は肺炎です。このような怖い病気になる前には、つい「年のせい」にしがちな症状や不調が出てきます。それらを称して老年症候群といい、やがて要介護状態や死へとつながっていきます。老年症候群のことを知って、予防していきましょう。

この記事の監修医師
近藤千種先生

近藤千種先生

33歳で医師を志し、その後1年で医学部合格。現在は内科医として地域医療に携わる傍ら、抗加齢医学会専門医として予防医療やアンチエイジング医療の場でも活躍中。

老年症候群とは

健康診断結果のイメージ画像
30代から40代、40代から50代、50代から60代になるにつけ、疲れやすくなったり、回復するまで時間がかかったり…。健康診断で何項目か引っかかるようにもなってきて、加齢を感じることが多くなるのではないでしょうか。

私たちが実感しているように、身体は加齢とともに機能が低下してきます。身体機能は20代で最高となり、その後緩やかに低下していきます。

しかし、加齢によってすべての身体機能が同じように低下するのではありません。神経や基礎代謝、細胞内水分は比較的保たれているものの、心臓や腎臓、呼吸機能は下がりやすいようです。例えば腎臓や心臓の機能は60代では30歳時の約8割、肺活量は約7割になってしまいます。

このように、加齢により全身の臓器の機能が低下し、それによりさまざまな病気が複合して起こることを「老年症候群」と言います。

老年症候群に含まれる病気とは

老年症候群は、その名の通り高齢者に多くみられ、治療や介護が必要となる一連の症状・病気のことです。サルコペニア(加齢による筋肉減少)、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)、フレイル(要介護手前の虚弱な状態)など、さまざまなトラブルが含まれます。

60代を過ぎた頃から、老年症候群に含まれるさまざまな病気に悩まされる人が増えてきます(図1)。
身体機能の加齢による低下を示すグラフ
図1  身体機能の加齢による低下
(佐竹昭介,鳥羽研二:老年症候群. レジデント 5(5):6-7,2012を参考に作成)
めまいや呼吸困難、頭痛などの急性疾患の出現率は50代まではずっと同じくらいで推移しますが、慢性疾患は60代から、介護が必要となるような病気は80代以降になるとぐっと増えてきます。

老年症候群は、どれか一つの病気だけでなく、いくつもの病気を併存して悪影響を及ぼすことが問題です。例えば下記のような状態です。
  • 関節や腰が痛いのであまり動かずにいたら、筋肉量や体重が減って、栄養状態も悪くなり(低栄養)、生活するのに他人の手助け(介護)が必要になった。
  • 筋肉量が減って、わずかな段差でもつまずくようになった。骨粗鬆症で骨が弱っていたので、軽く転んだだけで足の付け根を骨折し、しばらく入院することになった。
がんや心臓病、脳卒中など命に関わる病気はもちろん怖いものです。しかし例示したように、一つひとつはそれほど怖い感じでなくても、いくつか併存することで生活の質をおびやかすのが老年症候群の怖いところです。

老年症候群に含まれるちょっとした症状を「年のせい」と言って無視せず、下記のように必要な治療を受けて身体機能の維持・改善を図り、新たに別の症状が起こらないように予防することが大切です。
  • 関節や腰が痛いので、治療を受けながら運動を続けたら、筋肉量や体重を維持することができた。
  • 筋肉量が減ってわずかな段差でもつまずくようになったが、運動で筋肉量やバランス感覚が向上した。もし転んでも骨折しないように、骨粗鬆症の治療もしている。

老年症候群を予防するには?

ジムで自転車をこぐシニア男性の画像
では、老年症候群を予防するにはどうしたらいいでしょうか。

それは、筋肉が落ちないように注意しながら、規則正しい生活を送ることです。1日3食、毎食たんぱく質が豊富な食材(肉、魚、卵、大豆製品)を使った献立を摂りましょう。しっかり食べるには、口腔内のケアも大切です。

たんぱく質などの栄養素をしっかり摂ったら、筋肉を強くするための運動(筋トレ)や有酸素運動(散歩など)を定期的に行いましょう。そして十分に睡眠を取ることが、筋肉量を増やし、疲労を回復することにつながります。

なお、たんぱく質の多い食材として知られる鶏むね肉には、中高年の疲労の軽減に役立つ成分「イミダゾールジペプチド(イミダ)」が含まれています。

中高年の健康をサポートする注目の成分「イミダ」

チキンがのった野菜サラダの画像
イミダゾールジペプチド(イミダ)は、2つのアミノ酸からなるジペプチドです。鶏、牛、豚などの代表的なお肉のほか、人間の筋肉中にも存在し、次のような働きをもつことがわかっています。
  • 運動時の筋疲労を低減し、運動を続けやすくするサポートをする
  • 記憶力を含めた認知機能を維持する
サプリメントで摂ることもできるので、活用してみてはいかがでしょうか。
筋肉量を落としてはいけない理由や、筋肉をつくるための具体的な食事や運動について、詳しくは「40代から減る筋肉…あなたの筋肉量・筋力は大丈夫?『サルコペニア』チェック法を紹介」の記事をご覧ください。

また60代以降は定年を迎えるなどして、社会での役割を見失いがちになります。趣味やボランティア、地域活動など、何らかの形で社会や他人とつながり続けることも、老年症候群を予防するための大きなポイントです。

危険な老化のサインを早く見つけて対処しよう

最後に、自分の心身の機能で衰えているところがないかどうかを確認できる「基本チェックリスト」(25項目)をご紹介します。これは65歳以上の高齢者を対象としたチェックリストです。50代以前の方は該当する項目がほとんどないかもしれませんが、こういったことが危険な老化のサインとなることを知っておいてください。

日常生活における動作についてのチェックリスト

  • バスや電車で1人で外出していない
  • 日用品の買い物をしていない
  • 預貯金の出し入れをしていない
  • 友人の家を訪ねていない
  • 家族や友人の相談にのっていない

運動機能についてのチェックリスト

  • 階段は手すりを使う、壁づたいに昇る
  • 椅子に座った状態から立ち上がるときは何かをつかんでいる
  • 15分位続けて歩いていない
  • この1年間に転んだことがある
  • 転倒に対する不安は大きい

栄養状態についてのチェックリスト

  • 6ヶ月間で2kgから3kg以上の体重減少があった

口腔機能についてのチェックリスト

  • 半年前に比べて固いものが食べにくくなった
  • お茶や汁物等でむせることがある
  • 口の渇きが気になる

閉じこもりについてのチェックリスト

  • 週に1回以上、外出していない
  • 昨年と比べて外出の回数が減っている

認知機能についてのチェックリスト

  • 周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われる
  • 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていない
  • 今日が何月何日かわからない時がある

精神状態についてのチェックリスト(ここ2週間での評価)

  • 毎日の生活に充実感がない
  • これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった
  • 以前は楽にできていたことが今はおっくうに感じられる
  • 自分が役に立つ人間だと思えない
  • わけもなく疲れたような感じがする
これら24問に該当するものが少ないほど良い状態です。詳しくは、ウェブ上で回答&判定できる「介護予防のための生活機能チェック(25問)」を試してみてはいかがでしょうか。
※チェックリストの残り1問は「身長と体重を入力する設問」です。

もし、該当する項目が多くて心配な場合は、地域の地域包括支援センターや保健福祉センター、もしくは役場に相談してください。
<参考資料>
・瀬尾芳輝:加齢による身体機能の変化.Dokkyo Journal of Medical Sciences.44(3):257-263,2017
・佐竹昭介,鳥羽研二:老年症候群. レジデント 5(5):6-13,2012
・介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版),2009
・基本チェックリストとは.健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/chiiki-shien/kihonchekkurisuto.html