ニュースで流れる高齢者による自動車事故。内閣府によると、運転操作ミスによる当事者の死亡事故のうち、ブレーキとアクセルの踏み違い事故の割合は、75歳未満では運転操作ミス全体の0.5%であるのに対し、75歳以上では7.0%にのぼることが分かっています。運転能力のチェックは安心なカーライフのために重要です。この記事では、運転時認知障害早期チェックリストを紹介します。将来の安全のために年に1回チェックしませんか?
この記事の監修医師
今野裕之先生
元気なうちに年1度の運転時認知障害早期チェックを
いつもの道で車を運転中に「この道であっているかな?」「あれ?この道だったかな…」と不安を感じたことはありませんか?認知機能の低下は、日々の生活よりも運転時に比較的現れやすいと考えられています。
運転時認知障害早期チェックリストは、日本認知症予防学会理事長・鳥取大学医学部の浦上克哉教授監修のもと、特定非営利活動法人高齢者安全運転支援研究会が作成。軽度認知障害、いわゆる認知症予備群の人が運転時に表われやすい事象をまとめたものです。
5問以上にチェックが入ると要注意ですが、チェック数が多い=認知症ではありません。チェックの数によって、認知機能の低下を念頭に専門機関で診てもらう目安にしてみましょう。
運転時認知障害早期発見チェックリスト30 | チェック欄 | |
---|---|---|
1 | 車のキーや免許証などを探し回ることがある。 | |
2 | 今までできていたカーステレオやカーナビの操作ができなくなった。 | |
3 | トリップメーターの戻し方や時計の合わせ方がわからなくなった。 | |
4 | 機器や装置(アクセル、ブレーキ、ウィンカーなど)の名前を思い出せないことがある。 | |
5 | 道路標識の意味が思い出せないことがある。 | |
6 | スーパーなどの駐車場で自分の車を停めた位置が分からなくなることがある。 | |
7 | 何度も行っている場所への道順がすぐに思い出せないことがある。 | |
8 | 運転している途中で行き先を忘れてしまったことがある。 | |
9 | 良く通る道なのに曲がる場所を間違えることがある。 | |
10 | 車で出かけたのに他の交通手段で帰ってきたことがある。 | |
11 | 運転中にバックミラー(ルーム、サイド)をあまり見なくなった。 | |
12 | アクセルとブレーキを間違えることがある。 | |
13 | 曲がる際にウインカーを出し忘れることがある。 | |
14 | 反対車線を走ってしまった(走りそうになった)。 | |
15 | 右折時に対向車の速度と距離の感覚がつかみにくくなった。 | |
16 | 気がつくと自分が先頭を走っていて、後ろに車列が連なっていることがよくある。 | |
17 | 車間距離を一定に保つことが苦手になった。 | |
18 | 高速道路を利用することが怖く(苦手に)なった。 | |
19 | 合流が怖く(苦手に)なった。 | |
20 | 車庫入れで壁やフェンスに車体をこすることが増えた。 | |
21 | 駐車場所のラインや、枠内に合わせて車を停めることが難しくなった。 | |
22 | 日時を間違えて目的地に行くことが多くなった。 | |
23 | 急発進や急ブレーキ、急ハンドルなど、運転が荒くなった(と言われるようになった)。 | |
24 | 交差点での右左折時に歩行者や自転車が急に現れて驚くことが多くなった。 | |
25 | 運転している時にミスをしたり危険な目にあったりすると頭の中が真っ白になる。 | |
26 | 好きだったドライブに行く回数が減った。 | |
27 | 同乗者と会話しながらの運転がしづらくなった。 | |
28 | 以前ほど車の汚れが気にならず、あまり洗車をしなくなった。 | |
29 | 運転自体に興味がなくなった。 | |
30 | 運転すると妙に疲れるようになった。 |
【注意事項】
運転時認知障害早期発見チェックリスト30は、あくまで認知機能の病的障害を念頭に専門機関への受診を検討する際の目安であり、判断するのは本人やご家族です。
運転時認知障害早期発見チェックリスト30は、あくまで認知機能の病的障害を念頭に専門機関への受診を検討する際の目安であり、判断するのは本人やご家族です。
他にも以下のツールやサイトにおいて、認知機能のチェックや運転に不安がある場合のトレーニングができます。ぜひ活用してみてください。
脳体力トレーナーCogEvo
認知機能がチェックできるトレーニングツールです。トヨタ自動車株式会社の健保組合である健康支援センター「ウェルポ」において「脳体力トレーナーCogEvo」が健診に活用されています。医療機関だけでなく、再雇用などによりシニア従業員が増えたことで大手企業や自治体も導入しています。
※「脳体力」は株式会社トータルブレインケアの登録商標です。
※「脳体力」は株式会社トータルブレインケアの登録商標です。
エイジド・ドライバー総合応援サイト
ロードサービスでおなじみのJAF(日本自動車連盟)が提供しているWebサイト。運転にかかわる3つの機能(認知・目・耳の機能)をチェックできます。
家族みんなで無くそう逆走
東日本の高速道路を管理する、NEXCO東日本のWebサイト。65歳以上のドライバーとその家族を対象に、高速道路での逆走の注意喚起を行っています。家族と一緒にゲーム感覚でチェックできるテストが3つ紹介されています。
記憶力を含めた認知機能が落ちてしまう理由とは
そもそも認知機能とは、社会生活を営む上で必要な知的機能のことを指します。私たちは無意識のうちに、記憶力や集中力、注意力、判断力、理解力などの知的機能を組み合わせながら生活しているのです。
しかし認知機能は、脳の神経細胞がダメージを受けると低下してしまいます。主な原因として、以下の2つが挙げられます。
酸化・糖化・炎症
人間はエネルギーを作り出すときに酸素や糖分を使います。このときに脳の神経細胞の一部が酸化(サビつき)や糖化(コゲつき)を起こすと、劣化してしまいます。また脳が情報過多になったりストレスがかかったりすると、脳内に老廃物が増え、神経細胞の炎症も起こります。
詳しくは「酸化や糖化、炎症はなぜ悪い?イミダが持つ抗酸化・抗糖化作用とそのメリット」の記事をご覧ください。
加齢
30歳ごろから脳の神経細胞が徐々に減少していき、脳の萎縮が始まります。また加齢とともに、脳に酸素を取り入れる力が低下することも原因になります。
将来の運転や認知機能に不安を感じたら…
脳は情報過多やストレスが続くと、オーバーヒート状態になります。そうなると運転や仕事に集中しにくくなったり、仕事中のミスが増えたりします。また先述した通り、脳の神経細胞の炎症も引き起こしてしまいます。
運転時だけでなく、普段の生活においても脳のパフォーマンスを低下させないために、次のような生活習慣を心がけましょう。
- 睡眠を十分にとったり休息を適宜とったりして、脳を休める
- ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動で、脳に酸素を取り込む
- デジタルデトックス(一定期間スマートフォンやパソコンに触らないこと)を行い、情報から距離を置く
- 脳にいい食事をとる
詳しくは「脳疲労が仕事と健康に与える影響。認知症対策にもつながる5つのポイントとは」の記事をご覧ください。
食事は、5大栄養素(炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル)をバランスよく摂取することが基本です。そのうえで、脳にいい栄養素を意識して取り入れてみるとよいでしょう。
緑黄色野菜に含まれるβ-カロテン、柑橘系の果物やイモ類に含まれるビタミンC、ナッツ類に含まれるビタミンEには、強い抗酸化作用があります。
また高たんぱく・低脂質な鶏むね肉には、脳機能の改善効果が報告されているイミダゾールジペプチド(イミダ)が豊富に含まれています。
※医師による監修はここまでです。監修医師が特定商品への保証や購入等を推薦するものではありません。
認知機能の維持に役立つ成分「イミダ」とは
イミダゾールジペプチド(イミダ)は、カルノシン、アンセリン、バレニンといったジペプチドの総称です。ジペプチドとは、2つのアミノ酸がつながったものを指します。イミダが認知機能の維持に役立つ理由として、以下の2つの作用がわかっています。
酸化・糖化を防ぐ
脳の神経細胞は、酸化(サビつき)や糖化(コゲつき)するほど劣化していきます。イミダは構造上、酸化や糖化を防ぐ作用があると考えられています。イミダの量が多ければ多いほど、酸化や糖化を防ぐ作用が強くなるというイメージです。
脳にいい因子(BDNF)を増やす
BDNFとは、脳由来神経栄養因子のこと。神経細胞を活性化したり、増やしたりする働きをもつたんぱく質の一種です。イミダにはBDNFを増やす働きがあることから、神経細胞同士をつなげるような働きをしたり、神経細胞を活性化したり、保護したりする働きがあると考えられています。
イミダを経口摂取することで認知症スクリーニング検査のスコアが改善した[1]、記憶力テストのスコアを維持した[2]、などの研究結果が報告されています。詳しくは「なぜイミダは記憶力の維持に良いの?【研究者に聞く】」の記事をご覧ください。
イミダを効率よくとる方法
認知機能の維持に役立つイミダは、鶏むね肉や豚肉のほか、カツオ・マグロ・サケなどの魚肉にも含まれています。毎日の食生活に、イミダを多く含む食材を取り入れてみてはいかがでしょうか。
日本ハムでは、北海道日本ハムファイターズの栄養サポート担当の管理栄養士が考えた、イミダが豊富な「イミダレシピ」を紹介しています。
食生活の改善が難しいという人は、サプリメントで摂取するのも一つの方法です。イミダを摂りすぎて問題になることは、基本的にはありません。
年に1度のセルフチェックで安心ドライブ
自分自身の運転で、自由に好きな場所へ行ける喜びは、達成感やリフレッシュにもつながりますよね。十分な睡眠や適度な運動、脳にいい食生活を心がけながら、年に1度のセルフチェックを行って、安心・安全なカーライフを楽しみましょう。
[1]W Maruyama, et al. NEUROSCIENCE 2012, 2012-S-4800-SfN
[2]Hisatsune T et al. Journal of Alzheimer‘s Disease 2016; 50: 149-159
[2]Hisatsune T et al. Journal of Alzheimer‘s Disease 2016; 50: 149-159
順天堂大学大学院卒業。老化予防・認知症予防に関する研究で博士号を取得。大学病院や精神科病院での診療を経て2016年にブレインケアクリニック開院。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療に当たる。
認知症予防医療の普及・啓発活動のため2018年に日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立。
著書・監修に「最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術(青春出版社)」など。