あなたは「スマホ認知症」になってない?チェックして対策を!

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まだ30~50代なのに、もの忘れが多くなったり、集中力が低下したり、ケアレスミスが増えたりする……これは、スマートフォン(以下、スマホ)の頼りすぎにより脳の機能が低下してしまう「スマホ認知症」のせいかもしれません。今回は、スマホに依存することの問題点やスマホ認知症への対策などについて、赤坂インターナショナルクリニック 院長の竹内千雅 先生にお話を伺いました。

竹内千雅先生|赤坂インターナショナルクリニック院長

竹内千雅先生|赤坂インターナショナルクリニック院長

早稲田大学文学部 卒業
Georgetown University Pre Med 修了
東海大学医学部 卒業

慶應病院小児科 戸塚共立第1病院内科 勤務
米海軍病院(横須賀基地)救急科、家庭医療科 勤務

2020年3月 赤坂インターナショナルクリニック(内科・心療内科)を開院

地域のホームドクターとして、日本語、英語での診療に取り組んでいる。

【チェック】あなたの「スマホ認知症」の可能性は?

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今や幅広い年代で生活の必需品となる、スマートフォン(以下、「スマホ」)。
とても便利なので、スマホに過度に頼った生活を送っている人は少なくないようです。そのような生活を続けると、脳の機能が低下して集中できなくなったり、もの忘れが多くなったりすることも。そのような状態は「スマホ認知症(※)」と呼ばれています。

下記のようなことに心当たりはありませんか? そのような方はぜひ、この記事を読んで対策してみてください。

※スマホ認知症:スマホなどのIT機器に頼りすぎることで脳の機能を低下させてしまう病態(正式な医学用語ではありません)

<スマホ認知症の可能性チェックリスト>

□ 少しでも時間が空いたら、いつでもスマホを取り出して使っている
□ 思い出したいこと、疑問に思うことがあれば、すかさずスマホで検索する
□ 覚えておきたいことはすべてスマホで記録(撮影)する
□ ここ数年で物忘れが増えた、記憶力が落ちたと感じる
□ 人の名前や用事を忘れることがよくある
□ 漢字が書けない、簡単な計算ができない
□ 頭も身体もだるく、いつも疲れている
□ イライラしがち、気分が落ち込みがち、やる気が出ない、集中できない
□ 不眠、頭痛、めまい、腹痛など、色々な不調が出ている
参考:※1

【医師に聞く】スマホの使いすぎで苦しんでいる人が増えている

竹内千雅先生|赤坂インターナショナルクリニック院長
ここからは、一般内科・心療内科を中心に診療を行っている竹内千雅 先生(赤坂インターナショナルクリニック 院長)に「スマホ認知症」についてお話を伺います。
ースマホに頼りすぎる生活を送ると、どのような悪影響があるのでしょうか?
竹内先生:
何か調べたいことがあっても、自分の頭で考えず、スマホで情報をすぐに、楽に得てしまうことが問題です。普段から脳内の記憶をたぐり寄せる作業をしていないと、記憶力はどんどん落ちてしまいます。

特にコロナ禍になってから「前と比べて物忘れがひどくなった」「集中力がなくなった」と言って当院を受診される方が増えました。リモートでの仕事や授業がきっかけの一つになったのかもしれないと思っています。

小学校低学年の子が「友だちからメッセージが届いているのでは」「自分一人だけが取り残されているのでは」と不安で、食事のときも、お風呂でも、寝る直前まで……起きているときはスマホが手元にないと落ち着かない、ということがありました。若い世代から中年まで、広い世代でスマホ依存に苦しんでいる方がいます。

心配なのは、スマホが普及してまだ10数年しか経っておらず、これから30年、50年後には人間に対してどんな障害が出てくるのかわからないという点です。このペースで使っていると、想像がつかないくらいの障害が起こり得るのではないかと懸念しています。

人間の脳は、何もせず、ぼーっとしている状態(デフォルトモード)のときに良いアイデアが浮かびやすいものです。しかし、スマホのせいで脳がデフォルトモードになることを邪魔され続けると、どうなるでしょうか。かなり悪い影響をもたらすのではないかと思われます。
カナダで行われた研究では、青年がスマホ(SNS)を利用する時間が1時間増えるごとに、うつ病になる人が増え、症状も悪化することがわかりました(※2)。うつ病は自殺につながる深刻な病気ですから、スマホの使いすぎをあまり軽くみてはいけません。
ースマホとの距離を置きたいと考えて、受診する方が多いのでしょうか。
竹内先生:
みなさんスマホを触る時間を減らしたいという意識はあります。けれど、スマホが身体の一部、手の延長のようになっていて、あきらめて使っている人が多いようです。

私はスマホの通知を切ることを提案するのですが、通知を切ると不安になって、安定した生活が送れないと訴える人もいます。良くないとわかっていながら、苦痛を感じていながらも通知すら切れない方がとても多い印象です。

「スマホ認知症」のリスクを高める2つの理由

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ースマホに頼りすぎることで「スマホ認知症」になってしまう理由を教えてください。
竹内先生:
スマホに頼って『自分の脳をあまり使わないこと』と、『スマホからの情報インプット量が多すぎて、アウトプット量とのバランスが崩れてしまうこと』の2点があげられます。

人間の脳には、前頭前野という思考や創造性を担う部分があります。スマホに頼りすぎると、自ら考えることが減り、前頭前野がどんどん劣化していきます。筋肉と一緒で、脳も使わないと坂道を転げ落ちるように機能が低下するのです。

スマホに依存している方は、自分の脳で考えないために、スマホに書かれていることに疑問を持たずに、信憑性を自分で確認することなく、すっかり信じ込んでしまう傾向があります。まるで、自分の人生をすべてスマホに預けてしまっているような人が増えているようです。

実際に、医師が診察・検査して下した診断に対して、スマホに書いてあることと違うと主張される方や、ネットの間違った情報を信じて休診日に来院され、なぜ休みなのかと激怒されるような方がいます。スマホに書いてあることがすべて正しいと思い込んでいるわけですね。

しかし、震災などの有事の際に備えるという意味でも、スマホがなくなっても生き延びられる自分づくりが必要なのではないでしょうか。最後に頼れるのは自分の身体(思考能力、体力)だけ。普段からあまりスマホを頼りにし過ぎないことが大切です。
ー情報のインプット量とアウトプット量とのバランスが崩れてしまうことが、なぜスマホ認知症につながるのでしょうか。
竹内先生:
脳への情報のインプットもアウトプットも大事ですが、片方だけが過多になるとバランスが取れなくなります。

よく使われるたとえ話は「ゴミ屋敷」です。インプットが多すぎると頭の中でゴミ屋敷のような状態になって、どこに何があるのかわからず、必要なものを取り出せない(アウトプットできない)状態になり、脳がとても疲れてしまいます。

最近、こんな患者さんがいました。もともと映画や舞台が好きな方なのですが、仕事と自分のスマホを24時間気にかけている状態がしばらく続いたそうです。久しぶりに楽しみにしていた映画を観ることができたのですが、上映中もスマホが気になり、映画を観る集中力や好奇心、興味がなくなってしまったと。事前に情報を入れ過ぎたせいで、実際の映像が流れてきても楽しめず、途中で帰ってしまったそうです。これはまさにスマホの悪影響だなと思いました。その方はその後、カウンセリングと薬物療法でスマホ依存から脱することができました。

情報をインプットしたら「情報を整理する」というステップを作るのが大切です。いったん自分の言葉で咀嚼して、整理整頓をして、理解をする作業をしておくと、必要な場面で無理なくアウトプットできるようになると思います。

インプットしたことが正しいのかどうか判断せずに脳の中に詰め込んでも、そのままでは使えませんし、ただゴミを増やしているだけ。脳のストレスになり、精神状態としても良くありません。情報を取捨選択してインプットすることを意識してください。

「スマホ認知症」の対策とは

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ー「スマホ認知症」にならないようにするには、スマホとどう付き合えばいいのでしょうか。
竹内先生:
アメリカでは「20・20・20ルール」というものがあります。20分間スマホを見たら、20フィート(約6メートル)離れたものを20秒間見ましょう、というものです。目を休める目的もあるのですが、意識的にスマホをお休みする習慣を付けると、脳をボーっとさせる時間(デフォルトモード)を増やす助けになると思います。

また、スマホをカバンにしまってもらう、自分の見えないところに片付けるというのも第一歩です。お店でご飯を食べるときに、テーブルの上にスマホを置かないという方法もお伝えしています。これにより、スマホを1時間チェックしなくても、人生にさほど影響を及ぼさないということを体感していただきたいのです。

ちなみに、スマホは同時に複数のことを行う(マルチタスク)で使っているパターンが多いと思います。マルチタスクという言葉にはお得感があって、いいことのように聞こえますが、実は脳は一度に一つのことしかできません。脳内で高速に作業を切り替えることで、マルチタスクができていると勘違いしているだけです。自覚しにくいかもしれませんが、マルチタスクをすると、各作業のクオリティは下がります。
※スマホの利用を控える必要性については、下記の記事もご参照ください。
ースマホに頼らず、自分の頭をよく使うことも重要ですよね。
竹内先生:
その通りです。会話の中で、なぜそう思ったのか尋ねると「スマホに書いてあったから」と答える人が増えているように思います。自分の頭で考えていない証拠ですね。すぐにスマホに頼らずに、いったん自分の頭で考えてからわからないところだけを調べるという使い方が、スマホ認知症を遠ざけると思います。自分で自分に「なぜか」と問いかけたり、人とお話するときにスマホなしで自分だけで話せるところまでは自力で話したりする習慣を付けるといいのではないでしょうか。

また、私は紙での読書をおすすめしています。本はスマホでも読めますが、通知などが邪魔をして、読書に集中できません。紙の本なら、目の前にあるものだけに集中できます。読書を途中で中断するときはしおりを挟むだけでいいですし、次に本を開くときも、いちいち電源を入れるなどの作業が不要なので、脳にとってはいいと思います。

本でも映画でも運動でもいいですが、スマホを経由しないで自分の五感で感じるリアルの体験を積み重ねていただきたいです。
ースマホ認知症に関連して、食生活などのアドバイスなどはございますか?
竹内先生:
脳は糖質(グルコース=ブドウ糖)しかエネルギー源にできません。炭水化物ダイエットをしている方を多く見ますが、私は脳のために炭水化物をしっかり食べます。朝に炭水化物を摂らないと、脳の回転速度が落ちているのを実感するので、パンでもおにぎりでも、何かしら摂るようにしています。そうすることで脳が疲れにくくなると思います。糖質・たんぱく質・脂質をバランスよく摂ることが一番大事です。

食事も仕事も遊びも、何事も「腹8分目」にしておくことが、日常生活を楽しく暮らすうえで大切だと思います。人間の脳にも心にもキャパがあって、それを超えたら自分にとってマイナスになってしまいます。スマホ依存になるような人は100を目指している場合が多いのですが、80できればいいと考えて、実際は70や60であっても納得するくらいでいいのです。人生を長く・遠くまで継続して走り続けるためには、腹8分目がちょうどいいのではないでしょうか。
ー竹内先生、貴重なお話とアドバイスをありがとうございました!

【編集部より】イミダゾールジペプチドのご紹介

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スマホからの大量の情報インプットやマルチタスクは、脳を疲労させて認知機能を低下させます。その状態が続くと、いわゆる「スマホ認知症」のようになってしまうおそれがあります。普段からスマホに頼りすぎずに距離を取り、自分の頭を使うこと、脳を休ませるように心がけましょう。

機能性成分「イミダゾールジペプチド」は、加齢によって低下する中高年の方の記憶力を維持し、日常生活の一時的な身体的・精神的疲労感を軽減する機能が報告されています。また、イミダゾールジペプチドは抗炎症作用と抗酸化作用などを持ち、脳の疲労感を軽減する可能性があると考えられています。今回ご紹介したスマホ認知症の対策にプラスして、イミダゾールジペプチドも試してみてはいかがでしょうか。

※イミダゾールジペプチドについて、詳しくは下記の記事もご参照ください。
<参考文献>
※1)奥村 歩.その「もの忘れ」はスマホ認知症だった.2017,青春出版社
※2)Elroy Boers E, et al: Association of Screen Time and Depression in Adolescence. JAMA Pediatr 2019; 173(9): 853-859.